【業務標準化】のメリットとその進め方

はじめに

標準化は効果があるのか?どうやって進めるのか?

準備に時間がかかりすぎてトータルで考えると効果がないのでは?
大切なことをないがしろにして工数削減しても意味がないのでは?

今回はそんな疑問に答えるべく、どんな業務でも標準化は可能であり、メリットがあり、進め方の手順もあることを私が新卒時代に経験した具体事例を用いて説明していきたいと思います。

現状の把握

新卒入社した会社は製造業の業務改善コンサルティングで有名になった会社ですが98年当時はまだコンサル事業はなく、光造形(いまで言う3Dプリンター)事業と3DCAD教育がビジネスの柱でした。

新規立ち上げとして高速金型事業があり、私はそこに配属され担当となったのが穴”という工程でした。金型には実に穴が多く、その穴に入れるピンの点数も非常に多い。その”穴”を前任者である先輩から引き継ぎました。

私は来る日も来る日も穴を空ける、ピンを購入する、穴にピンを組み立てる作業を繰り返していました。コツコツやり続けました。

当初リードタイムは約3日間くらいかかっていたのは、ミスによる手戻りが大半でした。

工数は8時間程度、各タスクの習熟が進めば手の早さに比例してどんどん工数の削減が進み程なく2時間くらいにはなりました。

改善①:工数の削減 8時間→2時間(工数1/4)

個人のノウハウ=ブラックボックス

属人では対応しきれない物量
最初は部署全体で金型設計・製造工程を流すことすらままならなかったので、私の作業も大した物量ではなかったが、一旦仕組みが回り出すと私の前にこなしてもこなしても在庫が溜まるようになってしまいました。

ブラックボックス化
上司は金型設計製造リードタイムを納期までに納めないといけないし、私も休む間もなく働きつづけましたが一向に終わりません。こんなやり取りが続きました。

上司:穴はどうなっている?
私 :いい加減にしてください!終わるわけないじゃないですか。
上司:だってお前に聞かないと何もわからないし…

確かに私が一人でやっている以上、私以外誰も進捗状況はわかりません。自分しかわからない工程をつくってしまうと、私も上司も周りのメンバーも関わっているすべての人が不幸になります。

引き継いだ当初は必死に憶え書き記したことも、失敗し、挑戦し、改善しノウハウとして蓄積されていきます。下記は当時私の頭の中にあった一例を列挙したものになります。

ピンレイアウト、リブ押し承認、製品高さ、製品ヒケ許容値、穴の2D干渉、3D干渉、径毎のドリルの可能深さ、被削材の種類、工具の材質、工具の種類、加工サイクルの種類、加工の順番、工具の刃長、有効長、工具の呼び径、シャンク径
工具の2D干渉、3D干渉・・・

上記要素の組み合わせをCAD見て調整しながらほぼ手組みでNCプログラムを作る。※どんな業務でも書き出せば属人化してしまう理由はいっぱいありますね。

ミスと損害金額
プロセスが進めば進むほど、それまで経たそれぞれのプロセスで付加された価値の分だけ損害金額が増大していきます。個人としても会社としてもリスクになります。

工具の破損⇒工具交換(数千円~数万円)
工作機械の破損⇒修理(数十万円~数百万円)
金型形状に削り込む⇒樹脂が漏れる⇒再制作(数十万円~数百万円)
冷却機構に削り込む⇒冷却水が漏れる⇒再制作(数十万円~数百万円)

フォロー、キャッチアップ
自分ひとりしかわからない工程があると休むことができなくなります。ヘルプ工数を確保しただけでは対応できません。

何をやっているのか?どんな手順なのか?
何に一番時間がかかっているのか?
どれくらいの物量か?どんな手配品か?
どこまで完了しているのか?

標準化の具体的手順

これはまずい!となり、業務終了後に1時間改善活動の時間を確保し標準化を進めました。

1.手順を書き起こす。
最初はうまく書けませんでしたがまずは体裁を気にせず書く、その通りにやってみて、何回も書き直す。これを繰り返すことで粒度を揃えることができるようになりました。
ポイント:誰にでもわかるように。

2.判断と作業にわける。
判断とは何か?最初はうまくわけることができませんでしたが、自分の作業がなぜできたか一つづつ確認しながら行いました。ここでタスクには判断と作業があることを理解しました。
ポイント:自分は判断する側になる。

3.判断を数値→数式化する。
関数とマクロを本を見ながら手探りで進めました。必要に迫られればたいていのことはできるようになります。賢さよりやろうという意思の方が大事ですね。
ポイント:全て数式で表現する。

こんなことを1ヶ月くらい繰り返し続けました。頑張った甲斐があり必要事項を埋めれば作業指示書が生成されるようになりました。

4.ロールプレイする。
判断者である自分が必要事項を埋め、作業者である自分が作業する。判断者と作業者を明確にし、実行することで工数は1時間になりました。作業する時に余計なことを考えなくなったためです。
ポイント:まずは自分で試してみる

5.判断者と作業者を明確に分けて行う。
自分が判断者となり指示書を埋め、アルバイトさんに作業者を担当していただきました。さらに半分の30分になりました。
ポイント:作業に集中⇒生産性向上

生産性を可視化し、アルバイトさんによって16倍の生産性をたたき出しました。

改善②:8時間→30分(工数1/16)

6.標準化の次はシステム化
その後、現場オペレーションから外れ、工数削減を達成した上記手順をシステム要件に落とし込み、穴システムを開発していただきました。

簡単にかきますと・・・
穴設計を行うと自動で2D、3D干渉判定され、OKな穴はピン発注コード、穴加工プログラムを自動生成するCADCAMシステム。※なんだかわかりませんねw

そして穴工程にかかる工数をほぼゼロになりました。

改善③:8時間→ゼロ

さいごに

いかがでしたでしょうか。私が今回紹介したのは金型の穴工程の標準化する方法ではなく、業務を標準化をする方法です。世の中の業務の大半は標準化が可能です。

以上、業務標準化はできる!&効果ある!手順もある!の話でしたー